尾道・しまなみLOCAL CULTURE CRUSING
CYCLE編集長が語る,BICYCLE FILM FESTIVALと尾道で広がる自転車カルチャー
CYCLE編集長が語る,BICYCLE FILM FESTIVALと尾道で広がる自転車カルチャー
尾道に移住した編集者が語る、自転車と暮らしの豊かさ
自転車カルチャーを伝えるフリーペーパー『cycle』。その編集長を務めるのが、大阪出身で現在は尾道に暮らす杉谷紗香さん(通称オスギさん)です。編集者・ライターとして20年、cycleを創刊して17年。さらに昨年からは「BICYCLE FILM FESTIVAL(BFF)」の運営にも関わり、自転車を通じて人と人をつなげる活動を続けています。
今回は、cycleやBFFへの想い、尾道での暮らし、そして今後の展望について伺いました。

―― まずは自己紹介をお願いします。
杉谷:編集とライターを20年しています。生まれは大阪で、福岡に住んだ後に大阪へ戻り、その後コロナ禍をきっかけに尾道へ移住しました。
―― コロナ禍での移住、思い切った決断ですね。どんなきっかけがあったのでしょう?
杉谷:そうなんです。当時は子どもがまだ小さくて、公園にも行けないし、どこかに出かけたくても難しい…そんな大阪での生活がすごくきつくて。自然のある場所で暮らしたいと思ったのが大きな理由でした。
―― 環境を変えることで、暮らしの質を見直されたんですね。そもそもオスギさんが“自転車”と関わるようになったのは?
杉谷:実は最初は全然関係なかったんです(笑)。編集プロダクションで働いていた頃、社長に「自転車店を取材してみないか」と言われたのがきっかけでした。6店舗の自転車屋さんを回ったんですが、どこも個性が違っていて面白くて。スポーツバイクの世界があるんだ、ということを知ってから自転車カルチャーにどんどん惹かれていきました。
―― 6店舗も!確かにそれだけ違うと、取材も楽しくなりそうですね。その経験が今の『cycle』につながっているんですね。
杉谷:2008年に創刊し、今年で17年になります。年4回発行で、全国約1100カ所に設置しています。6割以上は自転車店以外のお店で置いていただいているんです。読者がcycleをきっかけに新しい場所に立ち寄ってくれたらいいなと思っています。
―― へぇ!自転車店以外にも置かれているんですね。どんな場所に多いんですか?
杉谷:はい。カフェや美容室などにも置いていただいているので、手に取るきっかけが広がるんです。

―― なるほど。自転車だけでなく、暮らしの延長線上に“出会い”を作る媒体なんですね。編集長として特に大切にしている視点はありますか?
杉谷:ビギナー視点を忘れないことです。専門的な知識がなくても理解できるよう、基礎から丁寧に書いています。
また、子育てや防災、戦争と平和といったテーマも扱います。自転車だけでなく、みんながちょっと気になるような暮らしに寄り添うトピックを入れることで、幅広い読者に響くように意識しています。ただ、雑誌と違ってそこまで深掘りはできないので、見た人が気になったら、深掘りしてもらう。そんな出会いの場にcycleがなればいいと思います。

―― 自転車という軸を持ちながら、社会や暮らしの話題を広げていく。そのバランスがcycleらしさなんですね。次に、もうひとつの活動「BICYCLE FILM FESTIVAL(BFF)」についても伺いたいです。
杉谷:2001年にニューヨークで始まった、自転車と映画の祭典です。創設者のブレント・バーバーさんがバスに轢かれた経験をきっかけに「自転車を祝福する場を作ろう」と始まりました。ブレントさんは映画のディレクターというのもあり、映画祭を通じて自転車と映像でつながるコミュニティを時間をかけて作っていったんです。

―― その想いが世界中に広がっているんですね。ちなみに、日本での開催はいつ頃から始まったんでしょうか?
杉谷:日本は2005年から横浜クリオシティ代表のやなけん(柳川健一)さんがやっていたんですが、2015年から10年ほど空いて去年から尾道で復活しました。初期の頃はストリートカルチャーの映像が多かったんですけど、最近だと自転車と社会的なメッセージを絡めた内容も多く、世界とつながることのできる場づくりができる映像になっています。

―― なるほど、映像を通してさまざまな“自転車のある暮らし”を共有できる場なんですね。オスギさんがその運営に関わるようになったきっかけは?
杉谷:コロナ禍の時にオンライン開催があり、協賛集めやブレントさんへのインタビューをお手伝いしたのが最初です。その流れで新たに日本の実行委員会を作ることとなり、尾道開催にも参加することになりました。映像だからこそ伝えられる衝撃や感動があって、自転車の新しい世界を知れるのがBFFの魅力です。
―― 映像には一瞬で感情を動かす力がありますもんね。尾道で開催してみて、どんな発見がありましたか?
杉谷:尾道って、「サイクリストの聖地」と言われているけど、実は地元の人はあまり自転車に乗らないんです。
―― えっ、そうなんですか?「自転車の街」という印象が強いので意外です!
杉谷:そうなんですよ。高校を卒業したら一緒に“自転車も卒業”してしまう感じで、車社会なんです。でも、BFFのように自転車を「文化」として楽しむイベントを通じて、少しずつ地元の若い人にも興味を持ってもらえるようになればいいと思います。暮らしの中で“普通に自転車に乗る”ということが広がっていったら、尾道の街ももっと面白くなっていくと思います。
―― なるほど。BFFをきっかけに、尾道の日常に少しずつ新しい風が吹いている感じがしますね。では、そんな尾道での暮らしについても伺いたいです。
尾道で感じる、海のある豊かさ
―― 尾道に移住した理由を改めて教えてください。
杉谷:海があるからです。大阪で私が住んでいたエリアからは海を見るのに車で1時間かかっていましたが、尾道なら、たった5分。毎日の生活の中に海の景色があるのはすごく豊かだと思います。海辺ですごす時間を毎日の習慣に入れると、浜辺でストレッチしたり、コーヒー飲んだり、岩に上ったりとか、なんてことない遊びができるんです。
―― 想像しただけで気持ちが穏やかになりますね。海のある暮らし、憧れます。
杉谷:そうなんです(笑)。毎日違う表情を見せてくれる海を眺めるだけで、気持ちがリセットされます。しまなみいいな〜って思ったのが、コロナ禍の少し前、ニュージーランドに語学留学した時。その留学は子連れで行ったんですけど、現地で滞在する間に自転車フレンドリーな暮らしができたのがとても良かった。帰国してからその町に近い雰囲気のエリアを探したら、しまなみと琵琶湖だったので、琵琶湖だったら大阪から近すぎると思って、しまなみにしました。

尾道は食の面でも、運動の面でも、住む面でも、この場所でできることが豊かだと思うので、何もないと言われれば「何もない」んですけど、遊び方を知ってる人からすればキャンプもできるし最高やん!ってなると思うんです。

―― “何もないけど、何でもできる”。その言葉は尾道らしいですね。海や自然とともに、自転車が暮らしの中に溶け込んでいるのが伝わります。
そんな中で、オスギさんがこれから挑戦してみたいことはありますか?
杉谷:向島で民泊みたいなものをやってみたいです。島の中に宿がまだまだ少ないので、来たい人が泊まれる場所を作りたいですね。それから、世の中はもう何でもデジタル化ですけど、紙媒体のcycleを、あえて続けていきたいです。“紙でしか伝えられないこと”ってあるので。
―― 民宿!いいですね。しまなみ海道と相性も良さそうです
杉谷:そうですよね。あと、個人的には、まだしまなみ海道を走破していないので(笑)、挑戦したいです。
―― まだ走破してなかったんですね。私もまだ因島までしかいけてないです(笑)
BIKELANDについては今後どう関わっていきたいですか?
杉谷:まずはレースに出たいですね(笑)。そして出店者や地元企業の取材を通して、しまなみ海道の自転車カルチャーをもっと広めたいです。尾道は海外からの来訪者も多いので、台湾やタイなど国を越えたつながりも作っていけたらと思います。
―― 海外とのつながりが生まれたら、尾道の自転車文化がさらに広がりそうですね。では最後に、読者の皆さんへメッセージをお願いします。
杉谷:尾道には遊び方が山ほどあります。海を眺めるだけでも、水に足をつけるだけでも楽しい。ぜひ来年のBIKELAND尾道・因島に遊びに来てください!
―― ありがとうございました。





















































