海のまちバイクロア尾道 5月17-18日(土日) at 因島アメニティ公園/ONOMICHI U2

尾道・しまなみ
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Interview

尾道育ちのONOMICHI U2支配人ってどんな人?

ONOMICHI U2支配人 井上恵理子
Interview

尾道育ちのONOMICHI U2支配人ってどんな人?

ONOMICHI U2支配人 井上恵理子

バイクランド尾道/因島のメイン会場のひとつであり、しまなみ海道の重要な拠点でもあるONOMICHI U2。実は自転車好きだけでなく、地元の人から観光客まで多くの人が訪れる人気施設です。そしてその賑わいの背景には、それを運営する魅力的な人たちがいるのでした。そんなスタッフを束ね、施設管理と事業を回す支配人 井上恵理子さんにお話をうかがいました。尾道でバイクランドを開催するきっかけになった人でもあります。


自己紹介をお願いします。


井上恵理子です。尾道出身です。高校まで地元尾道で過ごし、関西の大学へ進学、在学4年のうちアメリカと中国の大学にも行き、就職で故郷に戻り新卒から今の会社にいます。現在はこのONOMICHI U2の支配人を務めています。

ホテル支配人って聞くと映画とかの影響で老練な執事的イメージだったので最初に会った時にそのギャップにびっくりしました。支配人の仕事ってどういうものですか?


もともと系列ホテルのベラビスタスパ&マリーナ尾道に8年ほど勤めていて、U2の開業メンバーではないんですが、家がすぐ近くだったのでよくカフェしに来てたんです。それで私が30歳の時に新しい環境で働きたいと思っていたところ、尾道事業部に異動となり、U2のフロントスタッフとして配属になりました。色んなタイミングと経緯により、支配人になるよう辞令が出ました。

支配人というとホテルの責任ある立場ですが、U2の場合は上屋倉庫の躯体管理というのもあり、築83年になる建物なので行政と一緒に管理維持をするという役割もあります。さらに、その中に入る6店舗、ホテルやレストラン、ショップも全てテナントではなく自社運営しているので、全体の運営計画なども立てながら予算をつけて事業を回していくという事を行なっています。

まずこの歴史的な建物の管理があって、その運営も手がけるという事なんですね。その店舗の集合体であるONOMICHI U2はどんな施設なんですか?


ONOMICHI U2は1943年に建てられた海辺の海運倉庫を再生した複合施設です。「まちの中のちいさなまち」というコンセプトで、ホテル・カフェ・ショップ・レストランなどがある複合施設です。U2という名前は、県営上屋2号倉庫の名称から、「U」と「2」をとって名付けたものです。

サポーズデザインオフィスの谷尻誠さんと吉田愛さんの設計というのも大きな特徴です。名和晃平さんのアート作品なども設置されています。ロゴはUMA design farm さんに手掛けていただいてます。


もともと町おこしのプロジェクトを行っていて、瀬戸内エリアの衰退しつつある産業の復興とか、山手の空き家になっている空き家の活用、地域の雇用創出とか、そういうところから事業がスタートしています。

元々は町おこし的な事業だったんですね。

最初は山手エリアの昭和6年建築の歴史ある建物を一棟貸しの宿「せとうち 湊のやど」に蘇らせるところから始まりました。地元の人にとって思い入れや愛着のある古い建物に、若手や地元の建築家を起用して建築やデザインの新しい息吹を入れつつ、役割を変えながらも活かして残していく事業です。同じく山手にある昭和38年建築の尾道のアパートは、LOGに生まれ変わりました。

なるほど。

もうひとつ雇用の創出というのも狙いとしてありました。一棟貸しだとスタッフも少ないですけど、2000平米あるU2ぐらいの規模だとだいたい100名規模で雇用できるというメリットもありましたね。

観光ホテル事業をやりましょうってことではなく、街をどう良くしていくかというところが出発だったんですね。

尾道は映画の街とか尾道ラーメンなどB級グルメの街としてもともと観光客は多かったんですけど、一人あたりの観光消費単価が3000~3500円ほどだったんです。つまり宿泊しない通過型の観光地で、またホテル自体も少なかったです。

だから尾道初の中規模以上の建物の活用を考えた時に、まずは泊まりたいと思えるホテルを作ることになりました。建築デザインやアートで魅力的な空間を作ることで滞在を促したんです。

その頃はしまなみ海道ってすでにあったんですか?

ありました。1999年に開通してます。その頃から国内外からサイクリストの観光客は多くいらっしゃいました。当時はまだ馴染のなかったサイクルジャージの人を見かけてびっくりしてましたね。まだサイクリストの受け入れ体制や施設はほとんどなかったというのが課題でしたし、「しまなみ海道のサイクリングブームを一過性で終わらせたくない」という思いもありました。

なるほど。それでホテルサイクルとして自転車をテーマにしたホテルになった。

当時は尾道に限らず、サイクリストのためのレストランやホテル施設って日本にほとんど無かったんです。海外に目を向けてみるとポートランドとかにはそういう施設がありました。U2でも「サイクリストフレンドリー」もコンセプトに入れて各店舗に自転車を切り口としたサービスを実施しています。

やっぱりサイクリストのお客様が多いんですか?

ホテルに泊まるだけでなく、カフェとかレストランとかを利用してくれるサイクリストも多いです。他にも地元の人や尾道観光の人も多いです。昨年から観光客はインバウンドが多いですね。特に欧米やヨーロッパから。色んな客層の方々が交差されていていい感じです。

地元の人も結構来るんですね。

そうなんです。特にカフェとベーカリーですね。上屋倉庫は地元の方にとって愛着のある建物でもありますし、地元の方にデイリーに利用してもらえるようなお店づくりが必要でした。地元のお客さんもとても大切に考えています。

僕はちょっとオシャレすぎる空間は気後れしてしまうタイプなので、写真で見るU2は最初はそういう印象があったんですが、実際に来てみると近所のおばあちゃんが海側のベンチでコーヒー飲んでのんびりしてたり、いい感じに日常使いされてるのが印象的でした。

特にお店は利用しないけど、散歩の折り返し地点にしてくれているおじいちゃんとかもいらっしゃいますね(笑)夕方は高校生がパブリックスペースで勉強してたりもします。

尾道の他の喫茶店と比べると高価格帯のものがあったりするので、地元の人にとっても最初は入りにくいことがあったかもしれませんが、記念日に利用してくれる方も結構いらっしゃいます。あとはスタッフに会いに来るというのもありますね。あの子にコーヒーを淹れてもらいたいとか、ギフトを選ぶ時にいつもの人にお願いしてるのとか。

スタッフも地元の人が多いし、ユニークなキャラが多いですよね。人の魅力がサービスの魅力につながりますか?

私自身が本当すぐ近所の生まれというのもあって、施設としてそういう人間が関わっているというのはすごく自然で、そうあるべきだというのはありますね。あと、弊社では、尾道の事業部は女性スタッフが活躍できる場にしたいという方針もあるようです。

U2は弊社の運営する他の施設よりも街中にあって、カジュアルで元気で活発な感じなので、それでユニークなスタッフが多いと感じる部分もあるかもしれないですが、どのスタッフも基本的なサービススキルは身につけてしっかり提供できるようにすることを最優先していて、「自分らしさ」や個性を発揮するのはその後の話ですね。

ホテルの運営って生活の全てを提供するのでサービス業の中で最も難しいというのを聞いたことがあります。実際どうなんでしょう?

ホテル事業は24時間365日営業っていうところが大きな違いですかね。お客様と関わる時間も長く、その間の「衣食住」を提供するっていうのも大変な事ではあります。

ホテルで働くことで色々なお客様に出会ってきたんですけど、例えば、ホテルの利用目的って旅行とかだけではなくて、心身の「療養」とか複雑な事情もあるんです。初対面ではほぼ分からないんですけど、リピーターになって何度も接しているうちにそういう話ができる間柄になったりします。本当に色々なお客様がいらっしゃって、会話の中で利用目的をキャッチしてどう対応すると喜んでいただけるかをいつも考えています。

自分にもスタッフにも目指すべき姿は、自分のお客様を作るということです。国内外から直接予約の連絡が来たりもします。この人に頼めば尾道旅行は大丈夫って思ってもらえるように。そして、遠路遥々尾道までお越しいただいたのですから必ずお出迎え・お見送りするようにしています。

僕は基本貧乏性だったので、ホテルというのは安く寝るだけのものだったんですけど、ホテルとお客さんの良い関係の話を聞くと、まだまだ旅の魅力の一部しか知らなかったんだなという感じがします。

私たちは他にもguntu・LOG・せとうち 湊のやどを運営していて、それぞれコンセプトや価格帯が全然違うので面白いですよ。U2は一番カジュアル層のホテルです。そしてパブリック施設でもあるので来場者数が最も多い場所です。レジ通過者で年間約25万人の方が利用してくれていて、来場数だとその3倍ぐらいになると思います。

年間75万人!ショップとかレストランもとても良いですもんね。地元の食材とか製品がとても充実していて、お土産買うにも困らない。それらはどうやって運営してるんですか?

うちには企画部がありません。商品開発やバイヤーの役割もイベントも各店舗スタッフが自分たちで全て行うようにしています。

私たちは地元のスタッフを中心に採用していて、ここで生まれ育った自分たちがここでやりたい事を考えて、外からのアイディアも参考にしながら、提供・発信するっていうのが本来地元に根差した施設運営の姿だと思います。他部署に任せて、制作から販売までをやらされている感じにならないようにしています。

地元のスタッフといっても一度他県に出たり海外に行ったりした人が多いので、瀬戸内・尾道の魅力を伝えていくというところにU2で働く楽しさを感じてもらいたい。あとは、スタッフ自身が旅行でホテルに泊まる、気になったレストランやカフェ・ベーカリーで美味しい料理やお酒を楽しむ、ショッピングしながら商品ディスプレイを考察する、旅行先で自転車に乗るなど、日常の遊びが仕事に活かされることもU2で働く面白い点だと思います。

なるほど。自分たち自身で発信していくという事なんですね。そういうのって下手すると手作り感だけになってしまうと思うんですが、U2の場合はクオリティがすごく高いと思います。そのコントロールはどうやってるんですか?

作る責任と売る責任というのをよく現場には言っていて、自分たちが試作を繰り返して考え抜いて作るものを、責任を持って売り切るというところまでやらないといけないという事を考えてます。

社員だけでなく、パートやアルバイトさんの意見も聞き、世間の動向も注視しながら、企画を進めて行きます。そして私の仕事としてはクオリティのチェックですね。接客もですが、料理の味や提供方法・調理方法まで、商品ディスプレイも全て顧客目線で見るようにしてます。

自由にやらせて最後は責任を負うという事ですね。

そうですね。失敗しても良いからチャレンジしてみる!こと。そして中には失敗することもあります。そんな時は「まあええか」で、即座に次に進みます。とにかくそうやってスタッフと試行錯誤しながらやっています。

なるほど。めっちゃ良いですね。最初に井上さんに会った時に明るくて前向きで体力お化けというギャルマインドを感じたんですけど、それとしっかり事業を回している支配人としての仕事と、今回話してくれたU2の特徴とがしっかり組み合わさって、U2の良い雰囲気があるんだと思いました。バイクランド尾道や観光で訪れる人に向けて一言あればお願いします。

まずギャルではないですよ(笑)

尾道や瀬戸内には唯一無二の魅力があると私は思っています。この小さなまちのなかにある文化や自然体験をして欲しいのと、U2という場所を旅の拠点にしていただき、旅そのものを楽しんでもらいたいです。

ちなみに、「旅の宿帳」って知ってますか?

え?知らないです。

ホテルや旅館にお願いしてメッセージを書いてもらうノートなんです。
さっきの話でいうと、旅やホテルの滞在を楽しむきっかけになると思います。

御朱印帳のホテル版みたいなものですね。

そうです!あまり知られてないけど、ほとんどのホテルや旅館でやってくれます。フロントスタッフにお願いしてみてください。集め始めたら凄く面白くて、宿帳書いてもらうために、旅に出るってことまでありますね。3泊の旅だとすると毎日ホテル変えて3ページ集めるとか (笑) HOTEL CYCLEでも書きますのでぜひご依頼ください。

ありがとうございました!


ONOMICHI U2

尾道駅より徒歩5分/倉庫を改修した複合施設
Hotel, Restaurant, Bakery, Cafe, Shop, GIANT

HP: https://onomichi-u2.com/
Instagram: @onomichi_u2


Interview by @mon_jya

バイクランド 尾道/因島
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